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『ミモザの花が咲く頃に』-前編-を読んで


題材:弦伎、 『ミモザの花が咲く頃に』-前編-、ツムギウタ、2006年11月

comitia

 2006年11月12日(日)、友人と行ったCOMITIA78。 前日に誘われたのでカタログも買わず、事前にサークルの下調べもせずにりんかい線で乗り込んだ国 際展示場。入り口で『ティアズマガジン』を購入して入場。カタログをパラパラと見るが見当もつかないので文章、歴史、旅行記、SF・ファンタジーのコー ナーをひやかして歩く。ときたま気にな絵柄のサークルがあれば立ち止まって「見てもいいですか?」と尋ねて立ち読みするけれど、買える最低条件を通過する よう なサークルに出会わなかったので収穫は無かった。そうこうするうちに友人からもうそろそろ狩を終えそうだ、というメールを貰ったので、このまま手ぶらで帰 ろうか、と諦め気分になっていた。まぁ、コミティアに来たから何か買わなきゃいかんという法律は無い。

 最後の巡回だと思って文章系同人コーナーに移動する。するといかにも大学で文学やってましたって感じの、文学少女が少女の心を持ったまま大人になっ ちゃったっ て感じの、つまりイイ感じの女性同人作家が黒い服を着てぽつねん座っていたので、何回かその前を行ったり来たりして通過した後に、違う列に行っちゃって方 向感覚を失い、あわてて「どこだろう、どこかしら」とブースを探してやっと見つけて、ころあいと呼吸を見計らってブースを訪れてると、先客がいた。しば し 躊躇したが突撃した。
 そして女性に
「これ、見てもいいですか?」
と声をかけた。

「だめです。」
と拒否られる可能性もあったけれど、そんなことはなく、手渡された一冊を手に取った。
 もちろんそのまま持ち帰るのではなく、買える最低条件が整っているかを確認するのである。同人誌はむやみに買うものではない。何回も前を通過しているの で絵柄は標準以上ということだけは確認してあった。厚さは良し、正直言って文章系同人小説でここまでの長さは貴重だ。装丁、表紙絵も共に良し。中を開いて 文字組を見る、良し。時々これは文章ではなく前衛的文字芸術なのだろうと思える文字組の本もある。そして文章を数行読む、「アパルトマンから外に出ると、 切るような冷たさの風が頬を撫でた。」、読みやすい。 そして物語世界に一瞬で引き込まれる。ときどき一行読んだだけで本を顔に投げつけたくなるような同人小説家もいるが、これはうまい部類に入っていた。これ は買 える、読みたい。

「これ、一冊ください。」
購入を宣言した。価格は1000円、正直言って価格表示が見当たらなかったので「5000円です」と言われたらそのまま逃げるつもりだったが、同人でこれ だけ凝っ た装丁で1000円は安かった。しかし2000円と言われたら確実に逃走していただろう。あいにくと私は1万円札しか持っていなかったので女性は9000 円のお 釣りを缶から取り出していた。そして確かにお釣りと本を受け取る。コピー本『たたかうプログラマー』もついてきた。ここで私は自分の勘違いに気付いたので ある。「この人、働いていたのか!」 てっきり大学院生だと思っていた。その勢いで気になっていることを聞いた。表紙には『ミモザの花が咲く頃に』Le temps où la mimosa fleuritの下に「前編」と書いてあったのだ。ということは

「これ、前編って書いてあるんですけど、後編も出るんですよね?」
すると女性はしばし考え、

「あ、それは嘘です。それで終わりです。」
などと答えるわけは無く
「いえ、中編が5月に出る予定です。」
と答えた。笑顔だったけれど奥歯に鶏肉のササミが挟まったような物言いだった。 なので、はずみで、思わず言ってしまった。
「では5月に中編を楽しみにしています。」
なんで読んでもいないのにそんなことを言ってしまったのかは私にもわからない。しかし
こうして私の5月コミティア行き決定が決定したのである。

 そして13日の晩から14日にかけてこれを読んだ。舞台は独仏の国境地帯エルザス地方にあるバルティスという架空の街で、ウェストファリア条約からの両 国のこの地方をめぐる領土争奪の歴史を時代背景にしている。まず舞台と時代背景の設定がいい。歴史とともに物語がこれから動き出しそうな予感がある。そし てドイツ語、フランス語と、ドイツ語の方言であるエルザス語の描写も言語マニアにはたまらない。なにしろ後ろに参考文献があってかなり勉強されていること が伺える。だ からこそ、そういった資料に裏打ちされた現実感のある小説になっているのだろう。また、主な内容は一言で言ってしまえば「幼馴染である若旦那とメイドの禁 断の恋」だが、この恋の成り行き、心の動きが繊細でいじらしく、胸がちくちく痛む。主人公ミレーネのキャラクター描写が巧みなので思わず読んでいる方も彼 女に情が移ってし まう。楽しい。フォン・ライマン音楽祭はどうなったのか?2人はどうなるのか?次編が待ち遠しくなってきた。この魅力はやはり作者・弦伎さんの安定した文 章力があってのものだろう。読みやすいことは最大の武器である。だが一 つ苦言を呈せばp.78の2行目「験―    ちアビトゥーアで、」が4文字分文字落ちしていることだ。たぶん「、すなわ」が入るのだろう。他にもいくつ か小 さな誤字脱字はあったが、これは確認していなかったのだろうか?

 正直、文章系同人なんてつまらねーよ、と今まで思ってきたが、それは今回の買い物でそんな固定観念は完全に否定された。これからは文章系同人もあなどれ ない。ま、二次創作じゃ な くて創作限定だけどね。これは私の読書体質によるものなのかもしれないが、二次は読む気にならんぜよ。ツムギウタの弦伎さんは冬コミ(30日)で東ヒ 50aにて新 刊を出す予定らしいのでたぶん私は行くんだと思う。
Barkituro
表紙絵を描いていらした、すいひ氏のサイト「Oracle Eggs」
Oracle Eggs すいひ

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