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オーストリアか、オーストリーか、オウストリ か?

はん、アタシは算数も苦手だけれど社会も苦手だった のよ。                        
オーストラリアとオーストリアの区別ができないまま小学校中退しちゃったし。  
サ イコロジカル〈上〉兎吊木垓輔の戯言殺し 西 尾維新


 確かに中欧の小国、昔日の大帝国であるオーストリアと南半球の流刑大陸オーストラリアの名前は似ている。私も小学生のころは両者の言い間違えはもちろん のこと、どっちがどっちの国だか分からなくて混乱していたこともあったものだ。そんなわけで、日本人の中には両国を間違える人もいる。そして、たぶん在日 オーストリア大使館に「カンガルーってどこに行けば見ることができますか?」「一番綺麗な浜辺はどこですか?」「世界の中心のあの岩ってどこですか?」と いう能天気な電話をかけて大使館員を怒らせたのだろう。堪忍袋の緒が切れたのか、とうとう日本語での「オーストリア」の表記を「オーストリー」に変更す るとオーストリア大使館商務部が発表した。

 オーストリア大使館商務部(現オースト リー大使館商務部)によれば

Österreich 日本語表音表記 の変更について
残念ながら、日本ではヨーロッパに位置するオーストリアと南半球のオーストラリアが混同され続けております。
この問題に対し、大使館では過去の文献などを参照し検討を行った結果、Österreichの日本語表音表記を 「オーストリー」 と変更する旨、ご連絡 差し上げます。
大使館よりのご案内をPDFファイルにて添付いたしますので、ご高覧下さい。
暫くの間はオーストリアとの併記が行われますが、徐々に「オーストリー」の名前は日本の皆様の間に浸透し、定着していくことと存じます。
皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
2006年 10月 東京

ということで、これからの日本の世界地図は「オーストリア」の上に黒々と墨を塗り、「オーストリ−」と書くことになる。しかし大使館の努力にもかかわら ず、あまり名前は変わっていないような気がする。間違える人はこれからも間違えることだろう。根本的な解決にはなっていない。し かしこの影響で今まで世界史で習っていたオーストリア関係の名称も変更になってしまうのだ。

■オーストリア・ハンガリー二重帝国→オーストリー・ハンガリー二重帝国(韻をふんでる!)
■オーストリア継承戦争→オーストリー継承戦争(なんか軽いぞ!)

マリー・アントワネットも「オーストリア女」から「オーストリー女」になって蓮っ葉感もあがるというもの。

 なんでそもそも両国の名前は似ているのだろうか?これは両国が結託して世界の人を困らせようという企画ではなく、単なる偶然である。 オーストリアはもともとドイツ語ではÖsterreich「東の国」 という意味で、österと英語のeastと語源は同じ「東」である。一方でオーストラ リアの由来はラテン語でのterra australis「南の地」 もしくは「南半球大陸」となる。 こは北半球にユーラシア大陸があるから南半球にも地球の均衡を保つためにユーラシア大陸と同じくらいの質量の大陸があるのでは?という古代ギリシャから の地理学上の仮説から名付けられた架空の大陸の名前が、そのまま1770年に大英帝国領になったオーストラリア大陸の名前になったものだ。ちなみに宣言し たのはジェー ムス・クック船長で、彼は タヒチ島への金星の日面通過の観測という名目でこの神秘的な「南半球大陸」の探索を行い1770年にこの大陸に到達して大英帝国のこの大陸の領 有を宣言したのである。こうして伝説上の名前が大陸名として残ったのだ。このように違う言葉の違う方角を示す言葉が、なまりになまって同じような発音に なってしまったのである。 これは言語学上の一つの不幸かもしれない。まあ東になるから「東の国」としていたゲルマン人の命名の安直さにも原因はあるし、代わりの名前が思いつかな かったからそのまま伝説を具現化したアングロサクソン人にも問題はある。

 ちな みにエスペラントでもaŭstrala「南半球の、南天の、南風の」 という形容詞からAŭstralio「オーストラリア」(=南半球 国)という国名が 来ている。逆に「北半球の、北風の、北天の」はborealaであ る。もちろんBorealioという国はない。いつか北半球諸国家を 統合した「政治的軍事的経済的超国家」が誕生したら、それを私は「ボレアーリオ国」と命名しようか。与太話はこれくらいにして、その一方で「オーストリ ア」はエスペラントではAŭstrioと表記し、両国の区別はエスペ ラントでは日本語と余り変わらない。ここで諸言語での両国名を比較してみよう。


英語
フランス語
ドイツ語
トルコ語
デンマーク語
チェコ語
マジャール語
オランダ語
アフリカーンス語
アラビア語
エスペラント
オーストリー
Austria
Autriche Österreich
Avusturya
Østrig Rakousko Ausztria
Oostenrijk
Oostenryk
نمسا

Aŭstrio
オーストラリア
Australia
Australie
Australien
Avustralya
Australien
Austrálie
Ausztrália
Australië
Australië
أستراليا

Aŭstralio

 ドイツ語とそれに近いデンマーク語では「O」と「E」の中間音を表記しており、オランダ語系の言語では「O」となっている。それ以外の言語ではそれを 「Au」もしくはそれに類するもので表記している。トルコ語にはÖの音があるはずだが、それを採用せず、「Av」にしている。ラテン文字による国名表記が 定着したのは第一次世界大戦以後だから、だろうか?チェコ語とアラビア語ではまったく違う言い方をしている。基本的におおかたの言語で両国名は似ているの だ。その中でも日本はオーストラリアと関係が深くてオーストリアと馴染みは薄く、ラテン文字表記をしていないために改善の余地があるということでこんな表 記変更騒ぎがおこったのであろう。

 ちなみにこのオーストリーという呼び方は戦前の呼び方であって、無論そのころはオーストリーではなく「オウストリ」と呼んでいたらしい。「オーストリ ア」と「オーストリー」と「オウストリ」。同じ国の国名であってもこんなに印象が違うのはどうしてだろう。ちなみに私が抱いた印象はこんな感じだ。
●オーストリア:東欧の小国のイメージ
●オーストリー:太平洋の豪快な大国のイメージ
●オウストリ:20世紀前半に滅んだ王国のイメージ

 さて、日本人はどの墺太利を選択するのだろうか?私は個人的にオウストリが古めかしくて好きだ。
Barkituro


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